トンネル効果と量子ドット

トンネル効果というのは、電子が本来通れないはずの絶縁体を通り抜ける現象で、これは電子が単なる粒子ではなく、波の性質を併せ持っていることからおこります。
絶縁体の厚さが大体数nmの時に起こります。
このトンネル効果による電子の流れを、電子一個一個について観測することが可能となってきています。
簡単にするため、絶縁体を一辺sメートルの正方形で幅dが1nmとしましょう。
また真空に対する誘電率をεとします。
真空の誘電率は、10**(-11)程度です(**は累乗を表します)。
絶縁体の両側を導電体ではさむと、これはコンデンサーとなり、その容量cは、ε・10**(-11)・s**2/d(d=10**(-9))です。
各電子について観測するためには、一個の電子によるコンデンサーのエネルギー値の(e**2)/2cが、温度のゆらぎエネルギー(ボルツマン常数×絶対温度)よりはっきり大きくなくてはいけません。
ボルツマン常数はおよそ1.4×10**(-23)です。
温度は27℃つまり300Kとしましょう。
またeは電子の電荷で、およそ1.6×10**(-19)です。
移項すると、cは2.56**(-38)/(2×300×1.4×10**(-23))より小さい必要があります。
つまりε・10**(-11)・s**2/10**(-9) < 2.56×10**(-38)/(600×1.4×10**(-23))という条件が得られます。
数を簡単化するためε=2.56/0.84(通常の絶縁体として無理のない値)とすると、これはs < 10**(-8)ということになります。
つまり10nm程度以下だと、電子一個一個が意味を持ってくるわけです。
より端的にいうと、その領域の中に電子がすでに一つあると、その電子が奥に後ぞかない限り、次の電子は電気的斥力で大変入りにくくなります(クーロン・ブロッケード)。
奥行きがやはり10nm程度以下だと、その領域には電子は事実上一個しか入りません。
このように、電子を集団の流れではなく、一個一個を独立に扱うようにしたのが量子ドットです。
量子ドットはセレン化カドミウムを材料にすることが多いのですが、それを作る際の溶媒に高価なオクタデセンを使うので1グラムで20万円以上します。
ライス大学の研究者は、ダウサムAなど安価な溶媒を使うことで、費用を80パーセントも削減できたと発表しています。
2006年7月には理化学研究所が、カーボンナノチューブを用いてテラヘルツ領域の光子を検出したと発表しました。
電子が1個ずつ流れる単電子トランジスタのゲートを閉じておき、光子がカーボンナノチューブに衝突すると光子のエネルギーが内部の電子に与えられ、電子が飛び出て電流が流れるという仕組みです。
量子コンピューターへの応用が期待できそうです。
- 次のページへ:単量子メモリはどれくらい高密度か
- この記事の属するメインカテゴリ:ナノテクノロジーの理論へ戻る

